【賃貸不動産相続トラブル】相続人が決まらない その③

その②からの続き
相変わらず、賃料は管理会社が管理する口座に溜まっています。
管理会社の心配も右肩上がりです。
「そんなに心配しなくても、賃料を三人に分けて振り込んだらいいじゃないか」と思った方、相続にはそうはいかない理由があるのです。
Aオーナーが残した財産は『今のところ全て』『三人の姉妹が等分に』『共有している状態』になっています。
財産の分割協議が行われている間は、相続人が決まっている事務所・駐車場・ご自宅も、預貯金や有価証券などの金融財産も、全ての財産が仮の共有状態にありますが、財産の分割内容が確定したら『相続した時に遡って』所有者と決まった相続人の単有で相続登記する予定になっています。そのため、仮の共有期間に財産から生じた利益(今回は賃料ですが)を所有者にならない可能性がある方にお渡しすることができないのです。
同じように、賃貸マンションで設備の故障や部屋の破損など、補修が必要な事態が発生した時に誰が費用を負担するのか、賃借人が退去した時の退去精算や新しい入居の募集・新賃借人と賃貸借契約などを誰が行うのか、不動産の近隣トラブルが起こったら誰が対処するのか等、など、ナド…心配事を考えたらキリがありません。
とりあえず、三姉妹の全員が管理契約を継続することに合意されたため、相続人がお決まりになるまで管理会社が賃料をお預かりし、費用が発生したら窓口に決まられた三女さんの承諾をいただいてお預かりした賃料から支払う、その他の事態は内容に合わせて相談のうえで対処していくことになりました。
なんとか賃借人さんに迷惑がかからない状態にはなりましたが、少し大きめのトラブルが発生すれば管理会社と三女さんだけでは対応の決断ができませんし、管理会社が長期間にわたって賃料をお預かりすることもできません。(お預かり賃料に発生した銀行の利子をどうするのかなど、次の問題が発生してしまいますからね)
なんだかんだでAオーナーが亡くなって二年近くになった頃、三女さんから「結局、私がマンションを相続することになりました」との連絡がありました。
長女さんと次女さんの平行線は交わることなく、親族で話し合って相続の分配内容を変えたそうです。申し訳なさそうに言われますが、三女さんが相続人になられたことは、管理会社にとって凄く嬉しいことでした。この二年、大きなトラブルはありませんでしたが、協力して物件管理にあたってきたという信頼関係ができていたからです。
このケースでは、時間がかかっても円満な賃貸物件の継承ができましたが、そこまでの間にご家族の関係には修復できない心の溝ができている可能性があります。
賃貸不動産は第三者への影響が大きいため、相続人未定の状態を長く続けることはできません。賃貸不動産を所有する皆様は、自分の後は誰にオーナーを託すのか考えてみてはいかがでしょうか。トラブルのタネを残さないことも家族への愛情というものですから。