二次相続クライシスを考える

2025/10/04
二次相続クライシスを考える

2025年の路線価では、久留⽶市の地価は16%上昇しました。

これは全国でも⾼い上昇率で、福岡県全体の平均上昇率6%を⼤幅に上回っています。

また、2023年から2024年にかけての公⽰地価でも住宅地が3.8%上昇するなど、久留⽶市は地価の上昇が続いているエリアとなりました。

地価の上昇には、喜んでばかりいられない深刻なリスクが潜んでいます。そして、そのリスクは「二次相続」において顕在化することが多いのです。

 

「二次相続」とは、最初の相続が発生したあと、次に発生する2度目の相続のことです。

たとえば父親が亡くなったあとに母親が亡くなった場合、先に父親が亡くなったときに発生した相続を「一次相続」といい、次に母親が亡くなったときに発生した相続を「二次相続」といいます。

 

一次相続では、多くの場合「配偶者の税額軽減」が最大の節税策となりますが、地価が下落している時には有効だったこの手法が、地価が上昇する局面になると「問題を先送りするうちに相続税が増える怖い手法」になってしまいます。

だって、何もしなくても、時間と共に相続税の対象になる財産が増えてしまうのですから。

これが「二次相続クライシス」です。

 

他にも、二次相続の相続税が増える理由には以下のものがあります。

  • 相続税の基礎控除額が減る

一次相続では「配偶者と子ども」が相続人となることがほとんどですが、二次相続では配偶者がいないため、相続人が「子ども」だけとなり、基礎控除の対象人数が減ります。

相続税の基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人数)ですから、人数が減ることの結果として、相続税が高くなります。

 

  • 二次相続では配偶者控除が使えない

一次相続の際は、相続税の配偶者特別控除があります。

これは、配偶者が相続した遺産のうち、「課税対象が1億6千万円まで」、または「配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額まで」であれば、相続税はかからないという制度です。

この配偶者控除を活用して一次相続のときに配偶者が多く相続しすぎると、二次相続で対象となる相続財産が増えてしまいます。さらに、配偶者に自分自身で得た財産がある場合、二次相続ではその財産も加算されるため、一次相続より相続財産が多くなってしまうことがあります。二次相続の対象となる財産額が増えれば増えるほど、相続税は高くなります。

 

  • 死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が小さくなる

死亡保険金と死亡退職金の非課税枠は、それぞれ500万円×法定相続人数で算出されます。

二次相続の場合、配偶者がいなくなるため少なくとも法定相続人の人数は一人減り、500万円分非課税枠が少なくなることになります。

 

④小規模宅地等の特例が適用できない場合がある
小規模宅地等の特例とは、亡くなられた方が自宅や事業用として使用していた宅地等の相続税評価額を最大で80%減らすことができる制度です。

一次相続では、ほとんどの場合で配偶者が同居しているため、小規模宅地等の特例が適用できるケースが多いのですが、二次相続では同居していない子どもが家を相続することが多いため、適用できないことがあります。

 

さらに残念ながら、⼀次相続よりも⼆次相続の⽅が、揉める可能性が⾼いと言われています。

⼀次相続では親が仲介役となって遺産分割協議をまとめることができますが、⼆次相続では親がいないため、子どもの間で意⾒が食い違いやすくなります。

また、親の介護をしていた⼦と、しなかった⼦との間で、介護への貢献度などを理由に遺産分割で揉めることもあります。

⼦どもも年齢を重ねて、⾃分の年収をこれ以上は上げられない、親の財産に頼らざるを得ないという状況になっているなど、切実な状況も揉めごとに拍車をかけてしまうのでしょうか。

 

相続が発生すると、ご家族の心情的に高齢の配偶者が多くを相続しがちです。

この“ご家族の想い”を尊重しつつも、冷静に将来のリスクを考えていかなければなりません。

時間がかかるほど、相続税の負担は増えていくのです。